自宅のPC用に使用している液晶モニターで突然暗くなる現象が発生しました。半日ほど連続使用中の出来事です。最初はPCを疑い電源再立ち上げで表示が復活、が暫く経つとまた真っ暗になります。バックライトのトラブルと判断しました。電源OFF/ONで一瞬表示が復活するのでバックライトのランプが切れている訳ではないと考え修理できないか挑戦する事にしました。
2009年発売のモニターで13年間程使用しています
モニタースタンドの足をまずは取り外しました
ネットで分解記事や動画を参照するとやはりネジどめではなく前面と背面の二つ樹脂製のケースがスナップフィット(篏合爪)構造でピッタリ篏合されているようです。爪の部分を見つけてそこを外すようにして開けると思いますがどこにピンがあるのかも分かりません。またパネルのケースは篏合していると結構”固く”て押しても変形しそうもありません。動画ではハンマーを使用して振動を与えて外している例がありましたがそれをやる勇気はありません。適当な工具が無かったので、幅2センチ程の平刀(彫刻刀)を使用してカバーとカバーの隙間に差し込み少し回転させて(ひねって)隙間を広げそこに1㎝幅ほどのスクレパーを差し込みピンを探りました。平刀は力が入って使い易かったのですが途中で刃先が大きく欠けてしまい大損害です(-_-;)・・・・他の物を使えば良かった・・・
ピンを探りながら隙間にスクレパーを差し込み”ガチャガチャ”やりました
合わせ目をこじ開けたのでキズだらけになりました
朝から悪戦苦闘で一日がかりで何とかカバーを開けることができました。爪の部分が二か所程外れると後はどんどん外すことができましたがかなりピンが折れたりケースに少しヒビが入ったりしてしまいました。自分用なので止む無しです。
カバーを開けるとLCDパネルへのI/F基板とインバータを含む電源基板の二枚構成となっていました。パネルはINNOLUX社製のものでI/Fも電源基板も同社製の専用の物のようです。
当時?色々な会社が液晶モニターを販売していますが、ネット参照すると韓国、中国含めINNOLUX社製の“キット”で組み立てられているものが多いようです。
カバーを開けて回路基板を確認
基板上のIC名でネットを検索し情報を探りましたが実装されている中国製のICはほとんど専用のカスタムICなのか特性・機能などの情報を得ることはできませんでした。ただ検索していると電源基板部分の回路図と思われる情報を入手することができました。ただし解像度が悪く定数などの数値やテキストが明確ではありません。現象は一定しており、朝一番冷え切った状態からスタートすると30分位正常に動作し一旦不具合が発生すると電源OFF/ONでも短時間で暗くなるという現象です。このことから熱的要因でICや素子の不具合が発生すると想定してトラブルシューティング開始しました。
真っ暗になった時点でオシロスコープでインバーターの制御信号を見ると間違いなく発振が停止状態となっていました。
電源回路基板
現象から:
1.インバータ回路で熱的要因で不良発生し停止(スイッチング電源も含め)
2.インバータ回路制御用ICの熱的要因誤動作により停止
3.制御用IC入力へのI/F回路側からの誤信号(オン信号、輝度信号、ノイズ?)
4.制御用ICへの過電圧、過電流などの保護入力への誤信号(ノイズ?)
以上の4点を想定し最初にスイッチング電源部分の確認です。事例で良く報告されているスイッチング部分の電解コンデンサーをまずは疑い確認しました。電解コンデンサーの頭が膨れて不良になっている事例は自分のPCマザーボードでも経験があるので”頭”をチェック。外観では殆ど異常がなさそうです。簡易LCRメータを使用して実装したままチェックしてみましたが容量抜けなどの異常は見当たりませんでした。念のため少し膨らんでいるかと思われるものを外して再度LCRメータでチェックしましたが異常ありません。外したので新しいものに交換しておきました。
スイッチング回路に実装されている大きい容量の電解コンに様子
LCDパネルに通電しながら信号を追いかけるには基板とパネルまでのケーブルが短く、大きく開けることができないのでネジどめしてある基板を二枚とも外し”中ぶらりん”状態で確認していました。二日目に同じように信号を追いかけていると何やら焦げ臭いにおいが!!いつも経験している部品の焦げる臭いです・・・慌てて電源を抜こうとしましたが既に手遅れで煙が出てしまいました(-_-;)・・・・
I/F基板上でパネルへの電源供給用と思われるFETが焼損
基板パターン面とパネルのケース面あるいはケーブルに力がかかり変形して何らかの接触が有ったのか分かりませんが、パターンからパネルへのVCC供給と記載されている28,29,30ピンに接続されている素子が焼損していました。
回路図がないので焼損した部品の仕様が分かりません・・・。隣に実装されている部品がありシルク印刷を見ると二か所とも全く同じでD,G,Sの文字が書かれFETのようです。二つ近接して同じシルクで違う部品は使わないだろうと考え隣の素子のコードからNチャンネルMOSFET2N7002と判断しました。幸い秋月電子さんに在庫があるようなので部品を調達する事にしました。丁度他に出かける用事があり秋葉原に立ち寄り部品を入手40個入りで200円でした。帰って来てから焼損した素子を取り外し購入した素子に交換しました。
焼損した部品交換(右側)
余計な仕事をしてしまいました。今度は基板などが接触しないように慎重にテープ留めしてトラブルシュート再開です。幸い部品はNMOSFETで間違いなかったようで不具合は同じですが無事動作しました。信号を追いかける事一週間近く!!進展なしです。お陰でいろいろ信号を追いかけ”勉強”は出来ました・・・信号確認の結果想定していた1~4番は全て問題が無いように思われます。確認できた異常は現象発生時必ず5V電源ラインがオシロスコープ上で約0.2V程度低下する事です(5Vが約4.8V程にドロップする)。このことでインバータ回路の発振が停止し冷陰極管が点灯しなくなる。電源プラグ挿入状態ではモニターのスイッチング電源部分は常に通電状態です(5Vやインバータへの供給電圧15Vは常にオン状態)。プラグを一旦抜き、再度ACコンセントに挿入すると5Vラインはまずは4.8V付近まで立ち上がり、しばらくして5Vに立ち上がりこの間少しディレー時間があります。
熱的要因で動作中に5V電源が0.2V程低下する現象が発生しこの結果インバータ制御用ICが動作停止してしまうと言うストーリーに変更しました。
熱による5Vスイッチング回路不具合と考え基板上の発熱箇所を確認しましたがこれも特に異常はありません・・・
熱をキーワードに入手した回路図を眺めていたところ「サーミスタ」の記号を発見!調べると電源投入時スイッチング回路への過電流防止のためのサーミスタ(NTC)でした。AC入力部にあり、電源投入時のサーミスタの抵抗値で電流制限し、電流が流れることによる発熱で抵抗値が下がり通常の動作モードとなる。このサーミスタの不具合で”電流制限”時程度の”抵抗値”となり5V電圧がドロップするとほぼ断定し、基板を取り外し型番などの確認をするために接着剤で固められていた素子をかなり力を入れて掘り起こして番号を確認、さらに抵抗値も確認してみました。外した後は5オーム程度でしばらく放置後再度測定すると冷えたせいで10オーム付近になり一応動作しているようです。実際に通電して不具合発生時のサーミスタ抵抗値を確認しようと考え基板を元に戻し再度試験開始・・・・・その後3時間程連続で通電動作を行いましたが正常に動作し続けました・・・・・。
サーミスタ部品へ外的な力をかけたため状態が変化し正常動作したと考えられます。ハンダ部分の不良もしくは素子リード部の不具合などが想定でき、これが外的な力で一旦回復したものではないかと思われます。約一週間程の長い原因追及でしたが恐らく間違いないのでこれで原因追及は終わりです。互換のサーミスタ部品を手配して交換する事にします。
AC入力部に実装(接着)されていたサーミスタ
このモニターやPC及び周辺装置では電源プラグが挿入されているとほとんどのものは電源回路などが”動作”していることを考えると、火災など安全のためには不使用時必ずAC入力を遮断したほうか良いと再認識しました。
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